その鼻づまり、歯のトラブルが原因かも!?
長引く鼻水や鼻づまりの症状、なかでも蓄膿(ちくのう)症と呼ばれる慢性の副鼻腔炎は、息苦しさを感じてつらいものです。鼻のまわりに複数ある空洞のうち、鼻の両脇にあるものを上顎洞(じょうがくどう)と呼びます。ここに起きる炎症には、むし歯や歯周病など歯の病気が原因となるものがあります。
むし歯や歯周病などを長い間治療せずに放置していると、細菌が上あごから鼻の両脇の空洞に入り込んで、炎症を起こすことがあります。これが「歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)」です。黄色ブドウ球菌による発症が最も多く、レンサ球菌や大腸菌などでも起こります。特に奥歯のむし歯や歯周病が原因となりやすいので要注意です。
ほかに、歯根の治療中や抜歯の際に器具や歯根が空洞に触れた場合、歯を抜いた後に口と上顎洞が一時的につながった場合、インプラントなど歯の詰め物や装具の不具合なども、原因として考えられます。歯の治療後に鼻に症状が現れたら、歯性上顎洞炎の疑いがあると考えてみてもいいでしょう。
急性の場合には、歯の痛みに続いて、突然悪臭の強い粘り気のある鼻汁(びじゅう)や、ほおの周辺に頬部痛(きょうぶつう)が現れます。慢性の場合には、歯の痛みは比較的少ないようです。通常、鼻の片側に起こり、また下あごには副鼻腔がないので、下側の歯からは発症しません。
自覚症状としては、鼻づまりや膿性(のうせい)の鼻汁のほか、頭痛、ほおが赤く腫れる、上の歯茎が腫れて押すと痛みがある、かむときに痛みが生じる、鼻のまわりやほおがズキズキ痛む、口臭、などが挙げられます。うみが上顎洞にたくさんたまると、まるで心臓の動きに合わせたかのように、ズキズキとした痛みを感じることもあります。
診断は、上の歯にむし歯や歯周病があり、その歯を軽く叩くと痛みや違和感がある、また鼻の中にうみや炎症が認められるといった所見に加え、さらにX線検査で上顎洞に陰影があれば、ほぼ確定できます。
治療は、上顎洞炎の治療とむし歯や歯周病の治療を並行して行う必要があります。上顎洞炎に対しては、鼻の入り口近くから針を刺して上顎洞を洗浄し、中のうみを洗い流して抗菌薬の投与を行います。同時に、歯科で原因となる歯や歯肉の治療を行います。
抜歯などで口腔と上顎洞がつながってしまうと、外科的手術で閉鎖しなければならない場合もあります。むし歯や歯周病などの歯の病気は、ほかにも早産や肺炎、心臓病など、思わぬ病気の原因となり得ることがあります。定期的に健診を受け、口の中の健康を保ちましょう。
監修:松下歯科医院院長 松下和夫
「ケータイ家庭の医学」2016年7月掲載より(C)保健同人社
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