舌癌と口腔癌など悪性腫瘍について
口の中(口腔)も全身の一部であり、胃に胃癌(ガン)ができるように、口腔にも癌(がん)ができ、口腔癌(こうくうがん)と呼ばれています。口腔癌(こうくうがん)はさらに癌(ガン)が発生した部位によって、舌癌(舌がん・舌ガン)、歯肉癌(歯肉ガン)、口底(舌と歯肉の間)癌(がん)などに分類されます。
Q.口の中にも、癌(がん)ができるの?
A.口腔癌(がん)の原因は他の癌(がん)と同様、今なお不明な点が多く、予防法も確立されていませんが、誘因として喫煙、飲酒、合わない義歯や金属冠、むし歯のとがった縁などの刺激などがあげられます。
口腔癌(がん)の発生頻度は、全癌のおよそ3%を占めます。1980~87年の8年間に、日本の口腔外科、耳鼻科、および癌専門病院二八施設で口腔癌と診断された患者3.187名を調べたところ、口腔癌(がん)の部位別頻度は、舌癌(舌がん)が1番多く(56%)、次に歯肉(16%)、口底(14%)、頬粘膜(10%)の順になっており、性別頻度では女性よりも男性が約2倍です。年齢別には50代(27%)が1番多く、次いで60代(25%)、70代(18%)、40代(16%)の順です。
口腔癌は組織学的には扁平上皮癌が圧倒的に多く、ついで唾液腺に生ずる腺様嚢胞癌などの上皮性悪性腫瘍です。肉腫はまれですが、他部位からの転移性腫瘍や悪性リンパ腫が口腔に腫瘤や潰瘍をつくることもあります。
さて口腔癌の症状ですが初期症状は痛みがもっとも多く、50%ぐらいで、その他、しこり、腫れ、出血、歯の動揺などがあります。ただし、早期癌では痛みが強くないことが多いので、受診が遅れがちになります。口腔癌は肉眼的には、盛り上がって膨らんでいるもの、潰瘍をつくっているもの、白色や発赤しているものなどさまざまです。そのため、一見して口内炎のように見えるものでも実は癌である場合もあり、専門医(口腔外科)による診断が必要になります。
Q.どんな治療が行われるの?
A.口腔癌の治療法ですが、主に外科療法、放射線療法があり、化学療法も行われています。外科療法は、癌細胞の周囲正常組織を含めて一塊りとして切除し、退治させる治療法です。放射線療法は放射線を照射して、癌細胞を死滅させる方法で、外から放射線を当てる外照射法と放射線性金属を癌の中に(4~6日程度)埋め込む組織内照射法があります。化学療法は、抗癌剤を用いて直接癌細胞を攻撃破壊する場合と、放射線の効果を高める場合などに使われます。
治療成績は、癌の進行度によっても異なりますが、癌の大きさが2㎝以下で転移のないものでは、5年間生存者の頻度(5年生存率)は80~90%、2㎝を超え4㎝以下で転移のないものでは、70~85%程度となっています。進行すると成績はさらに劣り、早期発見・治療が大切なことがわかります。
口の中の潰瘍が2週間以上治らなかったり、できものが急に大きくなったりするような場合、早めに専門医の診断を受けましょう。
Q.舌癌とはどんなもの?
A.わが国では、口腔癌(舌、口底、頬粘膜、上下歯肉、硬口蓋の癌)のうち舌癌(舌がん)が最も発生頻度が高いとされています。
解剖学的に舌は舌尖、舌背、舌縁、舌根、舌下面に分けられます。このうち舌根は中咽頭に分類され、舌の前方3分の2の可動部がいわゆるoral tongueです。舌癌の大部分(90%)は舌縁に発生し、残りが舌尖、舌下面、舌背に発生します。早期舌癌の肉眼的所見は外向発育型、内向浸潤型、表在型の3群に分けられます。
舌癌の予後および治療後の形態、機能を規定する要素の一つとして、舌癌の舌周囲組織への進展度があげられます。
舌縁部に発生した癌は、舌の前後方向に進展し、さらに側方口底から下顎歯肉、下顎骨へ進展します。後方では舌根、前口蓋弓、扁桃窩、中咽頭側壁、副咽頭腔へと進みます。また下方深部へ進行したものでは舌骨上筋群に浸潤、舌の運動性が乏しくなります。したがって、進展したケースでは初診時、舌の運動障害、開口障害がみられます。
舌はリンパ管、血管がともに豊富であり、舌癌はこのリンパ流に沿って、リンパ節へと転移を起こしやすいのです。初診時の転移リンパ節の有無は、一次治療後の予後に関与する重要な因子であり、初診時転移リンパ節がなくても、転移リンパ節の出現に注意を払った経過観察が必要です。
原因、誘因としては喫煙、飲酒、歯列不正、う歯、不適合義歯、口腔の不衛生などが考えられます。また粘膜の白色、紅色病変は、白板症、紅板症とよばれ、前癌病変として処置および経過観察が必要です。喫煙飲酒歴の長い患者さんでは、上部消化管に重複して癌を有することが少なからずあり、併せて内視鏡等による検査が行われます。
Q.舌癌(舌がん)の治療とケアは?
A.舌癌(舌がん)の治療の主体は放射線と手術であり、通常、放射線外照射と小線源組織内照射線術前照射と手術であり、適宜、化学療法が併用されます。
T1-T3(UICC、T分類)で舌に限局した腫瘍で組織内照射にて根治治療されたものでは一般に機能障害は少ないです。これに対し、化学療法、外部照射で効果がなく、縮小しないもの、局所進展(T3,T4)癌、リンパ節転移ケースでは根治手術が必要であり、術後に種々の程度の口腔機能障害を後遺します。
舌癌(舌がん)に対する放射線根治照射後は、障害部位は粘膜、唾液腺、歯牙、下顎骨です。
晩期障害としては粘膜潰瘍、放射線骨壊死が重要です。骨障害の予防の第一は感染対策であり、日々の患者自身による口腔衛生管理ができるよう指導し、不用意な抜歯を受けさせないこと、義歯による褥創にも注意が必要です。
手術:
舌癌(舌がん)の浸潤度、進展度により、根治手術の術式は異なります。そして舌切除の範囲により術後の舌機能障害度はある程度予測されます。切除術式は、部分切除、舌可動部の半側切除、舌根を含めた半側切除、舌亜全摘、全摘、拡大切除に分類されます。
部分切除:
一次縫縮による創の閉鎖が可能です。
舌可動部半側切除:
腫瘍の浸潤が2cm以上あり、舌筋への浸潤があるもの。しかし、この場合でも深部組織の切除を必要としないものでは一次縫縮も可能であり、正確な切除範囲の設定により中間層植皮による治療が可能な場合もあります。深部諸筋を含めたpull-through operationでは再建が必要です。
舌根を含めた舌半側切除:
舌根を含めた半側切除を行うケースは、癌の浸潤の先端は固有舌筋にとどまらず口底、歯肉側へも浸潤していることが多いようです。この場合、下顎骨を保存するか、あるいは下顎骨の区域切除、半側切除が行われます。また一般に頸部郭清術が同時に行われます。
再建は舌、口底、歯肉、の軟組織再建と下顎骨再建が必要です。
舌亜全摘、全摘、拡大切除:
舌癌(舌がん)が正中を超えて深部舌筋、舌骨上筋群、口底、歯肉に浸潤した場合です。このような進行例では咽頭扁桃窩、中咽頭側壁へも進展している場合があります。
このようなケースでは再建は必須です。舌機能に関しては、切除が亜全摘の場合は残存する健側の舌筋の量と舌根の残量、舌下神経温存の有無により異なります。
舌全摘においても嚥下、構音機能をある程度回復しえますが、中咽頭側壁、舌全摘例では術後誤嚥の可能性があります。咀嚼に関しては、下顎の切除術式、歯牙の残存状況、舌、口底、歯肉軟組織の機能によって大きく左右されます。
癌(がん)患者さんにとって画一的な治療、看護はありえません。初診の患者さんの多くは、不安な気持で専門病院を訪れます。癌治療においては、原疾患の治療とともに精神面、心理面での早期よりの看護が必要です。そのためには、綿密な治療計画のもとに、治療にあたるスタッフの同レベルの理解とチームワークが必要です。
インフォームドコンセントが行われますが、癌の告知とも関連し、ケースによって個別化した説明を行っているのが現状です。
看護にあたっては、手術内容と術後の障害度をよく理解し、舌癌の拡大切除などに伴う呼吸障害、嚥下障害、コミュニケーション障害、審美障害などがよく理解、予測し、術後の障害をできるだけ軽減するよう、心身両面でケアする必要があります。
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