歯周病

歯周病ってなんのこと?



歯の根っこは、あごの骨の中に埋っています。そして、その骨の周りには歯肉(しにく=ハグキ)があります。歯周病とは、歯の周りの歯肉や骨が悪くなる病気です。歯槽膿漏(シソーノーロー)や、歯肉炎などをひっくるめて歯周病とよんでいます虫歯は、かけたり痛んだりするので、自分でも気付くことが多いのですが、歯周病は、ひどくなって、歯肉が腫れたり歯がグラグラしてきてはじめて気付くことが多いですので、とってもこわい病気です。小学生でも歯周病になるひとはおられますし、成人の90%の方は歯周病にかかっているといわれています。歯の調子が良くっても、定期的に歯医者さんへ行ってよく診てもらいましょう。特に、虫歯の少ない方は、歯医者さんに行く機会が少ないため、歯周病の発見が遅れることが多いので注意が必要です。

歯周病の原因

歯周病の初発原因は、プラーク細菌です。これが歯肉炎を引き起こします。口の中のプラークには350種類程の細菌が住み付いています。その中でporphyromonasgingivalis,actinobacillus,actinomycetemcomitansなどの嫌気性菌が歯周病の原因菌と言われています。
歯肉炎を起こした歯茎が全部歯周炎に進行するわけではありません。歯を失うほど重度になるには、プラーク細菌だけでなく、いろんな修飾因子が影響していることが分かってきています。歯周病を進行させる因子のことを私たち歯科医は「歯周病のリスクファクター」と呼んでいます。リスクファクターには、大きく分けて、口の中・全身・生活環境、の3つがあります。

まず口の中では、口呼吸、歯列不正、歯根露出、根面裂溝、不良補綴物などプラークを増加させ除去しにくくする因子があります。
また、歯肉炎と合併すると歯周病を急速に進行させる歯ぎしりや外傷性咬合(部分的に強くあたりすぎる噛み合わせ)があります。

全身の因子は十分解明されていないところが多いですが、重度歯周炎罹患者ではプラーク細菌産生物質(細胞毒性物質や抗原性物質)に対する歯周組織の反応が正常者と違い、わずかな刺激物質で歯周組織が強い反応を示すことが分かりつつあります。糖尿病、高血圧などの全身疾患や遺伝的因子があると、本来生体を防御する細胞の白血球や免疫担当細胞が過剰反応を起こしてサイトカインが放出されて破骨細胞(歯茎の骨を溶かす細胞)を大量に産生したり、逆に免疫反応が十分に起きず、免疫力低下を起こし骨が破壊されることが知られています。

生活環境というと、生活習慣病という言葉が最近特に話題になっていますが、喫煙、ストレス、不規則な生活、食生活、ブラッシング、口腔内への関心度があげられます。

歯周病の症状

健康な歯肉は明るいピンク色をしていて、ひきしまっています。自分では、なかなかわかりにくいですが、次のような症状のある方は歯周病にかかっていると考えてよいでしょう。

1 歯を磨くと歯肉が痛い。

2 歯を磨くと歯肉から血や膿がでる。

3 歯肉が赤く腫れている。

4 歯肉がやせてきた。

5 歯と歯の間にすき間ができてきた。

6 歯がグラグラする。

7 ひどい口臭がする。

歯周病にかかると口臭などもあるんですか?

口臭には大きく分類すると3つあります。

まず始めに、社会的容認限度を超える明らかな口臭、これを真性口臭症と言います。

二つ目は、患者さんだけが訴える精神的口臭、これを仮性口臭症といいます。

三つ目は、口臭恐怖症。これは、2番目の仮性口臭症がさらに悪化したもので、 精神科、心療内科の受診が必要となります。

歯周病による口臭は、最初に申しました真性口臭症の代表的なものです。その外にも耳鼻咽喉・呼吸器系疾患・腎疾患・肝疾患・糖尿病・トリメチルアミン尿症によるものもまれにありますが・・・

歯周病による口臭の原因は、口腔内細菌による含流アミノ酸の分解物質(システイン、メチオニン)である硫化水素やメチルメルカプタンなどの揮発性硫化物だということが分かっています。とくに、歯周病原因菌のP.gingivalisなどの黒色色素産生嫌気性桿菌は硫化水素やメチルメルカプタンの産生が高いことで知られています。

 

歯周病の治療方法

軽度の歯周病は、ハミガキだけで治ります。ただし、小学校で習ったハミガキの方法は、虫歯予防のためのハミガキです。歯医者さんで、歯周病の治療のためのハミガキの方法を習ってください。
中程度の歯周病は、ハミガキだけでなく、歯石を取り除いて、お口の管理をしていく必要があります。 重度の歯周病になると、手術をして悪い歯肉を取り除いたり、骨の形を整えたり、抜歯したりする必要があります。

歯周病の予防

歯をしっかり磨いていても、磨き方や食生活により、歯周病にかかることが多いものです。歯医者さんへ行って、先生や歯科衛生士さんから、あなたのお口の状態を良く聞いて、最適の方法で予防してください。2〜3ヶ月おきの定期健診によるメインテナンスが効果的です。

位相差顕微鏡で歯周病の原因細菌を特定できます。

位相差顕微鏡とは、光学顕微鏡の一種で、口の中の生きている歯周病菌を直接確認できる特殊な顕微鏡のことです。位相差顕微鏡検査で歯周病の原因菌が特定できます。生きている悪性の歯周病菌は活発に運動しています。

歯周病は歯石やプラークの中に含まれている細菌によって引き起こされますが、口の中に住んでいる細菌は数百種類、歯周病に関連している細菌は数十種類とも言われています。
そのため、歯周病菌と一言で言っても、患者さんによって原因となっている細菌の種類は異なるのです。原因となる細菌がわかることで、その人に合った治療方法や歯周病の進行リスクがわかるようになります。

位相差顕微鏡検査の方法

歯周ポケット内の歯垢を採取し、歯垢の中の細菌を調べます。細菌の種類や数、密度、活動性から歯周病の治療計画を立てていきます。炎症が強く歯磨き時の出血が多い場合などは抗生物質の併用がとても効果的です。