猫にも歯磨き

多摩市医科歯科ニュース

猫にも歯磨き 歯周病予防

愛猫の歯のケアをしているだろうか。犬に限らず猫も「歯周病」になる。3歳以上の猫の約8割にその可能性があるといわれ、予防には歯磨きが効果的だ。「口に触ると嫌がるから無理」と諦めないでほしい。放っておくと全身の臓器にも悪影響を及ぼしかねない。できるケアから始めたい。

●食生活の変化で

猫の歯科医療に詳しいとだ動物病院(東京都江東区)の戸田功院長は「飼い猫の食生活の変化が、歯周病に関わっている」と指摘する。

肉食の猫の歯は、ギザギザの山形で、前歯以外は上下でかみ合うことはなく、ハサミの刃のような働きをする。獲物の皮や肉を切り裂くのに適し、その行動によって従来は自然と歯が磨かれていた。あまりかむことはなく、のみ込むのが猫の食事スタイルだ。缶詰のような軟らかいウエットフードや、一口サイズのドライフードを食べるようになり、「歯を使うことが少なくなったので歯周病の原因となる歯垢(しこう)がたまりやすい」と説明する。だからこそ飼い主が猫の歯垢を取り除くケアを補う必要がある。

歯垢イコール食べかすではない。歯垢は細菌の塊で、その中に歯周病の原因菌が含まれる。「見た目で歯に汚れが付いていないからと安心なわけではない。来院する猫の半数は歯周病でも歯はきれいなまま」と警鐘を鳴らす。

歯周病は歯と歯肉の隙間(すきま)(歯周ポケット)で進行する。「診断にはレントゲンでの確認が不可欠」と戸田院長。悪化するほど歯肉が炎症を起こしたり、歯を支える顎(あご)の骨が溶けたりするので、痛みを伴い食欲が落ちる。口の中の問題にとどまらず、細菌が血流を介して体中に回り、心臓や腎臓などの病気を招く可能性もあるという。

●口臭感じたら病院


レントゲンで見ると、右の顎の骨の周りが歯周病によって溶けている(黒い部分)のが分かる=とだ動物病院提供
気付きにくい歯周病だが、「口臭」がサインとなる。進行すればするほど、口臭がひどくなる。口が臭いと感じたら歯科専門の動物病院での検診を勧める。

治療は麻酔をかけたうえで、たまった歯垢や歯垢が石灰化した歯石を取ったり、重度なら歯を抜いたりする。麻酔のリスクに強い不安を持つ飼い主も少なくないが、事前に全身を検査して適性を確かめる。「治療の遅れや麻酔なしでの処置の方が、猫の心身に負担をかけることになる」

歯周病を防ぐには、歯ブラシを使って毎日磨くのが理想的だ。「最初から無理やり歯ブラシを口に突っ込むのは禁物。猫が嫌がり、受け入れなくなる」。こう話すのは、ペットの歯のケア商品を扱うライオン商事(東京都墨田区)品質・学術室の獣医師、中村恒彰さんだ。

●段階的に慣らす

時間をかけ段階的に慣らすのがポイント。まずは手で口の周りをさわり、次に好物の味を付けた指で歯に触れられるようにする。そこから歯ブラシに挑戦したい。歯ブラシは市販の猫用か、人間のものなら部分磨き用を使おう。成猫の歯30本のうち、上の奥歯は歯垢がつきやすいという。歯の表裏ともに歯周ポケットを意識して毛先をあてる。どうしても歯ブラシが難しいなら、歯磨き効果を期待できるフードやおやつ、歯垢を付きにくくするジェルやスプレーを活用するのも手だ。

猫の場合、口内炎や吸収病巣にも注意したい。戸田院長は「歯根が溶け顎の骨に置き換わる吸収病巣は原因不明。早期発見して進行を遅らせるしかない」と話す。【池乗有衣】=毎月第1火曜に掲載します

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