お口から始める全身の健康

[お口からはじめる全身の健康]酒・たばこ、歯茎を損なう

大阪大学歯学研究科長・歯学部長 天野敦雄さん

天野敦雄さん
口の健康を守るためには、しっかりと歯を磨き、定期的に歯医者に行くことが大事です。日本人は米国人に比べると、口がきれいかどうかをあまり気にしていないようです。米国人と日本人のどちらが歯を大事にしているかを調べたデータによると、米国人の歯への年間投資は3万6000円なのに対し、日本人は6000円でした。

かつて歯医者は、虫歯など病気の治療に行くところでした。でも今は違います。病気を予防するために行くところになりました。

近年、口の健康が寿命や健康に大きく関係していることがわかってきました。

私たちの口の健康を脅かしているのが歯周病です。

歯周病は、 歯垢しこう に含まれる細菌によって歯茎に炎症が起きる病気です。歯を支える土台の「歯槽骨」が溶け、やがて歯が抜けます。

歯周病菌は、他人の唾液がついた食べ物を食べたり、飲み物を回し飲みしたりしてうつります。ペットからうつることもあります。

健康な時、菌の病原性と我々の歯茎の抵抗力のバランスがとれています。それが不健康になると、歯周病菌の病原性が高まります。すると、バランスが崩れて歯周病になるのです。

実は、歯周病菌がうつるのは18歳以降です。理由はわかりませんが、子供の口には歯周病菌はいません。
ただ、何らかの理由で18歳以降に歯周病菌がうつっても、実際に歯周病になるのは大体、中年からです。

感染してから歯周病が発症するまでの間は、未病の状態です。年齢を重ねて、歯磨きをすると歯茎から血が出ることがあります。そんな人は歯医者に行ってクリーニングしてください。そうすると、出血が止まり、健康な口になります。

歯周病は全身の健康に影響を及ぼします。歯周病菌は、口の中で血が出ているところから血管の中に入り、血流に乗って全身を駆けめぐります。今では、アルツハイマー病や心臓病、糖尿病、がん、骨粗しょう症、関節リウマチなどの病気に関係することがわかってきました。歯科には定期的にかからないとダメです。間隔をあけても、半年に1回は行ってください。3か月に1回がベストです。

歯周病はサイレントディジーズ(静かなる病気)と呼ばれます。痛みなど自覚症状がないため、気づかぬうちに進行するからです。このため、未病の状態でのケアが大事。歯科にかかるとともに歯ブラシ、歯磨き剤、歯間ブラシ、デンタルフロスなども使ってください。

歯磨きで一番大事なのは、小刻みに歯をこすって、歯と歯の間に毛先を入れることです。

全身が健康であることも歯茎の健康に大事です。歯茎の抵抗力が落ちると、歯周病にもなりやすいからです。歯茎は年齢とともにだんだん弱ります。もともと遺伝的に歯茎が弱い人もいます。最後に生活習慣も大切です。寝不足や偏った食生活、運動不足、お酒の飲み過ぎは避けてください。たばこは歯茎に悪影響を及ぼします。ストレスも体に悪いのでさけましょう。

◇あまの・あつお  1958年生まれ。84年、大阪大歯学部卒。2000年から大阪大歯学研究科教授。15年から現職


多摩市永山 亀山歯科 東京都多摩市貝取1-17-3
京王永山駅,小田急永山駅より徒歩8分

歯周病と糖尿病

多摩市 医科歯科ニュース

糖尿病を予防したければ歯医者へ行け
Posted on 12月 9, 2016 by white-family
参考:2016/11/14 日本経済新聞

14日は世界保健機関(WHO)が定めた国際糖尿病デーです。日本の糖尿病患者は「予備軍」も含めて2200万人ともいわれます。最近の研究で糖尿病の原因に歯周病が関係していることがわかってきました。

一方、これに対する内科医と歯科医の意識は低く、患者に情報は行き渡っていません。このテーマに詳しい医学博士・糖尿病専門医の西田亙氏と、歯科医の森昭氏に話を聞きました。

■体重18キロ減の理由

――はじめに糖尿病専門の西田先生にお聞きしますが、糖尿病の予防に歯周病の治療が有効だというのは本当ですか。
西田氏 まずこの写真を見てください。

歯周病治療前(左)と治療後の西田氏。体重は92キロから74キロに
左は7年前、歯周病治療を始める前の私です。体重は92キロ。まさに“医者の不養生”ですが、血糖値は高めで糖尿病予備軍でした。下はその頃の歯の写真です。リンゴをかじると血だらけになるような歯周病でした。それが、あるきっかけで歯のケアをするようになり、体重は18キロやせて74キロになりました。
――そのきっかけとは。
西田氏 7年前、歯科医師会に呼ばれて、糖尿病と歯周病について講演したのをきっかけに共同研究が始まったのです。それ以来、食後にはフロス(歯間清掃用の糸)をし、定期的に歯石を取ってもらうようにしました。歯をきれいにすると、汚したくないので間食が減ります。不思議と体を動かして汗をかきたくなり、ウオーキングや自転車に乗るようになりました。

――森先生は歯科医の立場から糖尿病予防としての歯のケアを提唱されています。
森氏 歯科というのは、ただ歯を治すだけでなく、内科の予防に役立つのだということを訴えています。米国では予防歯科が進んでいて、虫歯だけを治す歯医者さんは「カーペンター・デンティスト(大工みたいな歯医者)」と皮肉を込めて呼ばれます。まず歯科で体の異変を察知する。歯科は、病の進行の最前列に位置すると考えているのです。ただ私もそれに気づいたのは10年前ぐらいのことです。
――どんなきっかけですか。
森氏 当時、歯周病の治療の一環で、口の中をマッサージして唾液を出す処置をしていました。唾液には歯周病菌の力を弱めたり、口の中の傷を治して、菌が血管に入り込むの防ぐ効果があります。あるとき、患者さんから血糖値がよくなった、血圧がよくなったという声が上がってきました。顔のほてりがなくなったとか、更年期障害が軽くなったとか。なにか体に関係あるなと。

■糖尿病患者はほぼ歯周病キャリア
西田氏 まさにその通りなんです。歯周ポケットに入り込んで繁殖した細菌が出す炎症性ホルモンが、歯肉から血管に入りこみ、血糖値を下げるインスリンの働きを弱めることがわかっています。体はなんとかして、より多くのインスリンを作ろうとしますが、これが続くと、インスリンを作る細胞が疲弊し、糖尿病を発症します。
森氏 もう1つ、唾液が少なくなることによる味覚障害も糖尿病を悪化させます。歯周病がひどくて味がわからなくなって偏食になる人は山ほどいます。ハンバーガーとかフライドチキンとか濃い味にながれ血糖値が上がります。
――糖尿病患者のうち、歯周病が原因である比率はどの程度でしょう。
森氏 データとしてはありません。ただ、歯周病が国内に8000万人で、糖尿病が予備軍いれて2200万人ですから、糖尿病患者はほぼ歯周病を持っていると考えていいですよね。
――学術的にはどれだけ立証されているのですか。
西田氏 最初は1993年に、アメリカの歯科医が発表した論文がきっかけでした。糖尿病には、腎症、網膜症、神経症などの合併症がありますが、その第6が歯周病である、というものです。その後15年たってようやく、日本糖尿病学会の治療ガイドラインに歯周病が合併症の一つとして登場しました。
森氏 その後も両者の相関関係はあまり注目されずに来ましたが、去年あたりから風向きが変わってきましたね。歯をケアすると血糖値が改善し糖尿病が良くなるというのが学問的にもコンセンサスになりはじめていると思います。

■うまくいかない医科・歯科連携
西田氏 歯医者さんが最初に見つけた、というのがポイントなんです。この相関関係に気がついたのは、歯科医がつねに患者の口を観察しているからです。歯肉の色が悪いとか、ぶよぶよしているとか、目や手で感じる治療をしているわけです。一方で糖尿病医を含む内科医は、検査データばかり重視する傾向がある。
――実際に内科医と歯科医が連携した治療は行われているのですか
西田氏 糖尿病専門医は国内に5000人前後いますが、残念なことに、実際に患者を紹介するなど、行動している人はごくわずかでしょう。
――どうしてでしょう。予防が徹底すると糖尿病のお客さんがいなくなってしまうから?
西田氏 そんなことはありません。2200万人も患者がいるのですから、なるべく減らしたい。むしろ、歯科医から、糖尿病の疑わしい患者を紹介してもらえるのですから、売り上げアップにつながる「金鉱」です。
森氏 歯科医にとってもそうです。歯科医の領域が糖尿病というテーマに広がればと市場が広がる。口だけでなく、体を守るために、と患者が考えてくれたら、とてつもない「ブルーオーシャン」になります。
――ではなぜ両者は動かないのでしょうか。
森氏 やはりすべては教育だと思います。大学の医学部では歯科の大事さなど教えない。歯学部も糖尿病なんて関わりがない。歯科は人の命に関わるのですよという教育を歯学部ではしていません。
西田氏 両者が同居する総合病院や大学病院でさえ、横の連携はできていません。ただ、最近になってすこし気になる動きがあります。
――気になる、というのは。

■歯科衛生士の争奪戦が始まる
歯科衛生士が入ることで入院日数は半減

西田氏 昨年5月に、「元気な体は口腔(こうくう)から」という全面広告が全国紙に載りました。出稿元は歯科医師会かなと思ったら違って、日本医師会なのです。9月には日本医師会の雑誌が、歯科衛生士に関する興味深いデータを掲載しました。入院中の患者に対し、歯科衛生士が歯のケアをした場合と、看護師がした場合を比較したのです。その結果、入院日数は看護師の場合が4カ月、歯科衛生士は2カ月でした。
――それは何を意味するのですか
西田氏 入院日数が延びるのは、まちがいなく感染症によるものです。プロの歯科衛生士のケアと、歯科については素人の看護師のケアで、この差がついている。2カ月が4カ月になれば、医療費は数倍以上になると見ていいでしょう。
森氏 近い将来、歯科衛生士の争奪戦が起こるということですね。歯科医の業界ではよくいわれることですが、歯科衛生士は、その技能に比べると、労働条件や社会的評価が必ずしも高くないため、離職者が多いのです。出産を契機にだいたい辞めてしまって、復職しません。歯科衛生士の免許登録は20万人なのに、実際稼働しているのは10万人しかいないんです。

西田氏 口というのは、体の内部の粘膜が外部に露出した最も大きな部分ですから、口腔感染制御は極めて大事です。ただし、内科医が感染症に敏感なのに比べると、歯科医の意識は一部ではまだまだ低い。それが歯科衛生士を軽んじる風潮にもつながっているのではないでしょうか。このデータが周知されれば、病院は歯科衛生士を抱え上げようとするでしょう。社会保障もはるかに病院のほうがいいですから。新聞に広告が出たのは偶然じゃないと思います。厚生労働省や日本医師会の頭の良い人たちが動き始めたのでしょう。

――いずれにせよ、医科と歯科の連携はこれからますます必要になりますね。
西田氏 制度的にも追い風が吹いています。今年の4月からは、内科医が歯科医に対して糖尿病患者の紹介状を書けば、歯科医で抗生物質による歯周治療が直ちに開始できるようになりました。「糖尿病医による歯周病(英語名perio)処置」という意味で「P処(糖)」と呼ばれます。糖尿病の患者さんは、担当医に言ってみてください。
森氏 これまでの医科・歯科連携はがんや高齢者医療などでなんども試みられましたが、ことごとく失敗でした。大学や病院での縦割り意識が、そのまま社会に残っていることは、患者にとってハッピーではありません。
西田氏 糖尿病患者は、医者から「ご飯は8分目、1日1万歩」とさんざん聞かされて馬耳東風になっているでしょう? ところが「歯磨きをしましょう」というと、みんな新鮮に感じてくれるんです。他のサービスと同様に、治療も、患者のモチベーションを引き出す努力が必要です」
(聞き手は小板橋太郎)


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歯科疾患と全身疾患

歯周病と全身疾患

歯がグラグラして最終的には抜けてしまう歯周病は、成人の多くが患っている炎症性の病気だ。虫歯と並ぶ歯科の二大疾患だが、影響は口腔(こうくう)内にとどまらない。これまでの研究から、肝臓病や心臓病、糖尿病など全身の疾患とも密接に関係していることが分かってきた。歯周病を治療すれば、こうした全身疾患の症状改善にもつながる。


 

歯周病が全身に及ぼす影響

歯周病と心臓疾患・脳血管疾患

狭心症・心筋梗塞

動脈硬化により心筋に血液を送る血管が狭くなったり、ふさがってしまい心筋に血液供給がなくなり死に至ることもある病気です。

血管内に発生するプラーク
動脈硬化は、不適切な食生活や運動不足、ストレスなどの生活習慣が要因とされていましたが、別の因子として歯周病原因菌などの細菌感染がクローズアップされてきました。

歯周病原因菌などの刺激により動脈硬化を誘導する物質が出て血管内にプラーク(粥状の脂肪性沈着物)が出来血液の通り道は細くなります。

プラークが剥がれて血の塊が出来ると、その場で血管が詰まったり血管の細いところで詰まります。

脳梗塞

脳の血管のプラークが 詰まったり、頸動脈や心臓から血の塊やプラークが飛んで来て脳血管が詰まる病気です。歯周病の人はそうでない人の2.8倍脳梗塞になり易いと言われています。

血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、動脈疾患予防のためにも歯周病の予防や治療は、より重要となります。

歯周病と糖尿病

強く疑われる人=約890万人、可能性を否定できない人=約1320万人、合わせると2,210万人いると推定されます。
(平成19年国民健康・栄養調査より)

歯周病は糖尿病の合併症の一つ

歯周病は以前から、糖尿病の合併症の一つと言われてきました。実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多いという疫学調査が複数報告されています。

さらに最近、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係も明らかになってきました。つまり、歯周病と糖尿病は、相互に悪影響を及ぼしあっていると考えられるようになってきたのです。

歯周病治療で糖尿病も改善することも分かってきています。
歯周病菌は内毒素をまき散らす

内毒素とは?
細菌の細胞壁に含まれる毒物。細菌が死滅しても毒は残る。エンドトキシンともいう
歯周病の治療による血糖コントロールへの影響
歯周病菌は腫れた歯肉から容易に血管内に侵入し全身に回ります。血管に入った細菌は体の力で死滅しますが、歯周病菌の死骸の持つ内毒素は残り血糖値に悪影響を及ぼします。血液中の内毒素は、脂肪組織や肝臓からのTNF-αの産生を強力に推し進めます。

 

TNF-αは、血液中の糖分の取り込みを抑える働きもあるため、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きを邪魔してしまうのです。

歯周病を合併した糖尿病の患者さんに、抗菌薬を用いた歯周病治療を行ったところ、血液中のTNF-α濃度が低下するだけではなく、血糖値のコントロール状態を示すHbA1c値も改善するという結果が得られています。


全身の健康に歯科が出来ること

歯肉の炎症が全身に多くの影響を与えることは昨今の研究で明らかになってきています。歯周病も糖尿病も生活習慣病ですから互いに深い関係があって不思議ではありません。

毎日の食生活を含めた生活習慣を見直し、歯周病を予防する事が全身の生活習慣病を予防することにつながります。

歯医者は口腔内の変化をみる事のできるプロです。口腔ケアも自分一人できちんと行うのは難しいと言われています。半年に一度は歯科医を受診し、生活習慣も含め口腔内のケアを受けるようにしてください。

歯周病と妊娠1

妊娠性歯肉炎

一般に妊娠すると歯肉炎にかかりやすくなるといわれています。

これには女性ホルモンが大きく関わってくるといわれており、特にエストロゲンという女性ホルモンがある特定の歯周病原細菌の増殖を促すこと、また、歯肉を形作る細胞がエストロゲンの標的となることが知られています。

そのほか、プロゲステロンというホルモンは炎症の元であるプロスタグランジンを刺激します。

これらのホルモンは妊娠終期には月経時の10~30倍になるといわれており、このため妊娠中期から後期にかけて妊娠性歯肉炎が起こりやすくなるのです。

ただ、基本的には歯垢が残存しない清潔な口の中では起こらないか、起こっても軽度ですみますので、妊娠中は特に気をつけてプラークコントロールを行いましょう。油断すると出産後に本格的な歯周病に移行する場合もありますので、注意が必要です。

また、まれに妊娠性エプーリスという良性腫瘍ができる場合もありますので、その場合はかかりつけの歯医者さんにお早めに受診してください。

歯周病と妊娠2

歯周病と低体重児早産

近年、さまざまな歯周病の全身への関与がわかってきました。

なかでも妊娠している女性が歯周病に罹患している場合、低体重児および早産の危険度が高くなることが指摘されています。

これは口の中の歯周病細菌が血中に入り、胎盤を通して胎児に直接感染するのではないかといわれています。その危険率は実に7倍にものぼるといわれ、タバコやアルコール、高齢出産などよりもはるかに高い数字なのです。

歯周病は治療可能なだけでなく、予防も十分可能な疾患です。

生まれてくる元気な赤ちゃんのために、確実な歯周病予防を行いましょう。

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎とは、食べ物や異物を誤って気管や肺に飲み込んでしまうことで発症する肺炎です。

肺や気管は、咳をすることで異物が入らないように守ることができます。しかし、高齢になるとこれらの機能が衰えるため、食べ物などと一緒にお口の中の細菌を飲み込み、その際むせたりすると細菌が気管から肺の中へ入ることがあります。

その結果、免疫力の衰えた高齢者では誤嚥性肺炎を発症してしまいます。

特に、脳血管障害の見られる高齢者に多くみられます。

 

誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは、歯周病菌であると言われており、誤嚥性肺炎の予防には歯周病のコントロールが重要になります。

骨粗鬆症

骨粗鬆症は、全身の骨強度が低下し、骨がもろくなって骨折しやすくなる病気で、日本では推定約1.000万人以上いると言われています。そして、その約90%が女性です。

骨粗鬆症の中でも閉経後骨粗鬆症は、閉経による卵巣機能の低下により、骨代謝にかかわるホルモンのエストロゲン分泌の低下により発症します。

歯周病と骨粗鬆症

閉経後骨粗鬆症の患者さんにおいて、歯周病が進行しやすい原因として最も重要と考えられているのが、エストロゲンの欠乏です。

エストロゲンの分泌が少なくなると、全身の骨がもろくなるとともに、歯を支える歯槽骨ももろくなります。また、歯周ポケット内では、炎症を引き起こす物質が作られ、歯周炎の進行が加速されると考えられています。

多くの研究で、骨粗鬆症と歯の喪失とは関連性があると報告されています。

したがって、閉経後の女性は、たとえ歯周炎がなくても、エストロゲンの減少により、歯周病にかかりやすく、広がりやすい状態にあると言えます。

また、骨粗鬆症の薬としてよく用いられるビスフォスフォネート製剤(BP系薬剤)というのがあり、これを服用している方が抜歯などをした場合、周囲の骨が壊死するなどのトラブルが報告されています。歯周病でぐらぐらしているから自分で抜く、などということは絶対に行わないようにしてください。

関節炎・腎炎

関節炎や糸球体腎炎が発症する原因のひとつとして、ウィルスや細菌の感染があります。

関節炎や糸球体腎炎の原因となる黄色ブドウ球菌や連鎖球菌の多くは、歯周病原性細菌など口腔内に多く存在します。

これらのお口の中の細菌が血液中に入り込んだり、歯周炎によって作り出された炎症物質が血液に入り込むことで、関節炎や糸球体腎炎が発症することがあります。

歯周病とメタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪蓄積を臍部の内臓脂肪面積100cm2以上と定義、ウエスト周囲径が男性で85㎝、女性で90㎝以上を基盤とし、さらに、1)血中脂質異常、2)高血圧、3)高血糖の3項目のうち2つ以上に異常所見が見られる病態です。

大きな特徴は内臓脂肪を基盤とすることであり、高血圧、高血糖、脂質異常の値がさほど高くなくても脳卒中や心筋梗塞の危険性が高くなります。

歯周病とメタボリックシンドローム

詳しいメカニズムは解明されていませんが、歯周病の病巣から放出されるLPS(歯周病菌由来の毒素)やTNFαは脂肪組織や肝臓のインスリン抵抗性を増加させ、血糖値を上昇させます。

また、重度歯周病患者では血中CRP値が上昇し、動脈硬化や心筋梗塞発症のリスク亢進と密接に関与すると考えられています。

さらには、この慢性炎症が個体の老化を促進するという論文も出てきました。

このように歯周病とメタボリックシンドロームの関連性が注目されています。


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